数年前、「安全研究会」の仲間にすすめられ「チーミング」を読んだ。そこで初めて「心理的安全」というを言葉を知った。自分でも「すごい!」と思い、職場や小さな研究会でも紹介し話題にしてきた。誰にとっても「耳障り」も良いので、いまやプロの「専門家」たちの関連本や講演会、セミナー、ネットの解説がすごい勢いだ。しかし・・・
ここにきてエドモンドソン博士が「心理的安全性が高い例」と評価したトヨタに問題が起きた。私がすこしひっかかっていた「心理的安全性の高い組織」というのは過剰な評価ではないかという「疑念」が現実化したようで残念だ。
その後,今年の3/18、「トヨタ(グループ)のアンドンを無批判に評価してきた」と朝日新聞の記者が反省の記事をかなり大きな紙面を使い掲載した。
「うち」(トヨタ本体)と「そと」(ダイハツや日野自動車、トヨタ織機)への態度・ルールは違うのか?子会社、下請けに「あんどん」は(認め)ないのか?
トヨタの生産システム「TPS」は「アンドン」に代表されて語られる。作業員が不安を感じたり、おかしいと思ったときには「アンドンのひもを引き」解決するまでラインを止めることが許されているシステムだ。アンドンがひかれると、問題解決チームがすぐにやってきて原因を探り、解決を図るシステムらしい。現在は「紐を引く」ことも近代化されているらしいが、とにかくラインを止めて考える、ようになっていてそこに罰則などはない。出来上がった製品の質(安全も)を保ち、大量のリコールを防ぐ、という目的なのだろう。
ところがこの1年、完全子会社になって20年近いダイハツ(社長はトヨタ出身)などが型式認定の検査をごまかす・・・・・・という不祥事が続いていたことが発覚した。結果、数か月工場のラインはとまり、トヨタ向けの小型車の生産もとまった。その後始末が続いている。
この事件の背後に、トヨタからの新車開発のスケジュールへの圧力・忖度・・(トヨタ本体は「おしつけてはいない」、といい、ダイハツは「押し付けられてはいない。忖度はしたかも」、といっている)や経費削減の圧力があったのではないか?と言われている。
当該記者は記事で「新車開発の頻度をスピードアップして、ファッションのように・」などというダイハツ社長の発言を「TPS」の理念との齟齬も考えず「無批判に賛美してしまった」と反省している。
EV化への流れが緩やかになり、円安や輸出入の仕組みもあって、最高の利益を享受している会社が、子会社や協力会社(これまで下請け、とよんでいた)には「効率の良さ」「経済性」だけを求め、アンドンを引かせず、(トヨタにくらべると少しゆったりした開発やスケジュール管理で遅れがちな)社風の変更をもとめていた(公には口に出さないが)のではないか。
・ボーイングにまで「トヨタの生産方式(リーン生産)」を輸出したことと、B787、B737系の最近のトラブルは全く関係がないのか?本来のの「アンドンの理念」は伝えられているのか?
・「心理的安全性」の理念に反対する必要はないが、「うち」と「そと」の違い、「プロジェクトの倫理性」も少しは気になる。
・「安全第一」で有名な(ゲーリ社長の)USスチールを日本の鉄鋼会社が買収しようとしている。寡占状態をつくり、より利益を上げたいのだろうが、歴史も誇りもある会社だと思う。米国社会からも反対の世論が多数ではないのか。経済的合理性(「高値で買い占める」資本主義的ルール)だけですすめるのはヒューマンファクター的(レジリエンスを機能させる資質的)に考えるとうまくいかないような気がする。
・(トヨタで思い出した)「リーンヘルスケア」というものを目指しているアブナイ国がある。
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