事始別館 9-10
レジリエンス行動をささえる資質 「attitude」について
TSを身に着け、CRMなどのNTSを身に着けたとしても、それを発揮する最後の「一押し」ができるか否かは「attitude」の有無だ。
Attitudeとは「心的姿勢」、「倫理観」、「矜持」、「誇り」などを総合的にあらわす意味があるようで、「態度」という一言の訳語で表現するには難しい。ほかにも「一生懸命な姿勢や考え方」とか「気持など感情を伴う態度」、も含まれているようだ。Behaviorなどと違い「個人的」「内的」な意味が強い。
「attitudeがある」というのは、眼前の擾乱にたいして、逃げたりするのでなく、前向きに挑む態度をもち、傍観者的態度を振り払い、責任感、ヒューマニテイにあふれた使命感、正義感をもって事にのぞむ、ことを意味しているようだ。この例として思いつくのが、地中海の豪華客船から乗客を置いて逃げ出した船長と、離陸直後に両エンジンが停止したにもかかわらずハドソン川に無事着水して、沈みかけたA320のなかを2度見回り、もっとも最後に機内から脱出したサレンバーガー機長との差だ。
私は2003年にCRMグループのパイロットのかたからこの言葉を始めて聞いた。が、その時は単純に「安全最優先の態度」くらいに考えていた。だが、彼らは単なる「安全管理」とか「リスクマネージメント」としてではなく、心身ともにすぐれたリーダー(パイロット)を現場で育てようとしていたことをあとになってわかった。彼は、会社全体のattitudeが変わったとき「世界一安全な航空会社になれる」と目標を掲げていたのだ。
レジリエンス行動への評価
レジリエンス行為への評価は結果からの評価は避けるべき、と言われている。結果だけから非難するようなことをすると、人間は傍観者的な態度をとるようになり、「manualに書かれた範囲内の行動」しか、しなくなる。そういう現実を繰り返し経験すると(組織にとっても)「悪い学習」となり、「迷う」どころか関心さえ持たなくなる。結果、知識も思考も縮退していく。
評価はいわゆる「よきサマリア人の法」に倣うべきだと小松原教授は言う。これは、医療では救急の現場などではずっと言われていたことでもある。善意で手伝ったことが、良好な結果が得られなかった場合にいちいち責任を問われていたら、どんな仕事でも誰も手を上げなくなるのはあきらかなのである。(ただ、良い結果でも、悪い結果でもしっかり記録しておくことは組織のレジリエンスにとっては必須だと考えている)
最近「自分のためのリスクマネージメント?」が最優先に考えられているような気がしてならない。教える側が「それ」を理由に「従わせる」ような教育をしているようにも見える。残念だ。
✱一方で、医療ニュースで事故調査委員会の「調査報告書」がまるで「権威者の鑑定書」のように扱われ、それを理由に医療者側が訴えられている例がかなりある、と知った。。
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